伊豆の踊子 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2003年5月5日発売)
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「川端康成 少年」文庫化&新装 発刊
もちろん食指が動く未読作品。
ということで、川端康成作品おさらい。

伊豆踊り子 他3編 短編集。
二十歳の一高生は、伊豆に一人旅にでる。自分の孤児根性の歪みの反省とその息苦しい憂鬱に耐えかねての旅。
旅の途中、旅芸人一行と出会い、一人の踊り子に心惹かれる。そればかりではなく、貧しい旅芸人達は、孤独であった彼を慰めていく。
14歳の踊り子への想いが恋であったかという所は、人それぞれ。私は、踊り子の純真無垢な裸体を見た時点で慈愛へ浄化されたかなと思う。
旅芸人の厳しい生活と踊り子の行く末。
旅は終わりを迎え、別れに彼は涙を抑えない。
それは、悲しみだけでなく、自身の歪みからの解放、これからの生き方への希望があるのかと。

そして!忘れていたのか?読めていなかったのか?
「少年」への期待値なのか?
青年はなかなかの泣きっぷり。もちろん、東京へ帰る船の上で泣くのですが。あ、もうこれ以上は、書けないわ。

「温泉宿」
底辺を生きる温泉宿の酌婦達。彼女らを買う、当時底辺の男達。彼女達の悲哀と逞しさ。
各章を季節に分けて、温泉宿を描く。

「抒情歌」
霊能力がある女性が、死んだ元彼に語りかける。
彼女に語らせる作者の死生観なのかな。
50ページくらいだけど、難解。
輪廻転生を一番美しい抒情詩としながら、人間の霊魂のみを尊ぶことをひとりよがりとする。
自分は花となり花粉を運ぶ胡蝶に結婚させてもらうと結ぶ。

「禽獣」
犬小鳥の飼育からの生死。出産・動物の性など具体的。ちょっと、なんでしょうねえ、と調べたら、川端康成本人がこの作品に対する書評が誤読されて嫌いだとか書いているらしい。テストとかで作者の意図に反する出題がされがちなヤツですね。
漱石の文鳥は、ペット的感だったけど、こちらはねえ、ちょっと気持ち悪いですよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新潮文庫
感想投稿日 : 2022年4月10日
読了日 : 2022年4月10日
本棚登録日 : 2022年4月10日

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