山形の少女・タキは、昭和の戦前から戦争初期、東京で、女中として働いていた。それは、大好きで美しい奥様と、可愛い小さなおうちで、家事の腕前をふるう楽しい日常だった。
そんな彼女が、女中を引退後、回想しながらノートに書き留めた物として描かれている。それを、時折、学生の甥が読むといった趣向。
最近も、敗戦前後の小説を何冊か読みましたが、それらのような、抑圧的な生活を書くのではなく、女中として、知恵と工夫で奥様を支え切るということを、楽しんでいるかのように思う。
この小説は、最終章で趣を変えます。
奥様が、戦時でありながら、夫がありながら、恋をしてしまう。その、想い人へ宛てた手紙が、開封されないままタキの遺品から見つかります。
タキが最初にお勤めした、小説家に教えられていた“かしこい女中”としての行動だったのか。また、タキは、奥様の友人にこの恋愛について相談したことがあります。その時の、“きれいな女は罪ね”と小説の抜粋から、意味慎重な会話がされます。タキさん同様、何を意味しているかわからず、数度読み返しました。ここに、タキさんが手紙を隠した本当の理由があるのか。正解は、作者のみ知るとのこと。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
直木賞
- 感想投稿日 : 2023年3月2日
- 読了日 : 2023年3月2日
- 本棚登録日 : 2023年3月2日
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