経済大国ではなく、映画大国となった日本、そこは美藝公と呼ばれる俳優(天皇的存在?)を頂点とした封建国家。すべての映画人たちが高潔な志をもって芸術のための映画作りを行う…。というユートピア小説。
そんな世界が崩壊していく筒井的カタストロフィを期待したが、そういうこともなく気持ちわるいくらいに清らか。そして、主人公である脚本家が小説の構想として「経済国家」となったデストピアの日本(テレビやマスコミ文化によって映画が衰退し、文化が低俗化した国家)を語る。
消費社会と化した日本への批判がどーもどこかで読んだ覚えがあると思ったら、参考文献にボードリヤール「消費社会の神話と構造」、リースマン「孤独な群衆」「何のための豊かさか」が。
このどこまでいってもきらびやかな世界、登場人物が「誰かの夢かもしれない」と語るあたり、が筒井的悪夢を予感させる。
間に挟まれる横尾忠則による架空の映画のポスターが素晴らしい。筒井康隆作詞作曲による映画「活動写真」主題歌の楽譜も。
A4版、ハードカバー、二段組の美本。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ポストモダン
- 感想投稿日 : 2013年4月11日
- 読了日 : 2013年4月6日
- 本棚登録日 : 2013年4月6日
みんなの感想をみる