にんじん (岩波文庫 赤 553-1)

  • 岩波書店 (1976年2月16日発売)
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感想 : 47
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どんな運命でもぼくよりゃましだよ。
僕には一人の母親がある。この母親が僕を愛してくれないんだ、
そして僕がまた、その母親を愛していないんじゃないか。

にんじんが反旗を翻したのは突然のことであったが
上記一文からにんじんがたどりついた思考がわかる。
にんじんは母親に愛してもらうことを捨てたのである。
そして自分も母を愛していないと告白したのである。
(意地悪をされながらもにんじんは、母親への愛着を持っていた様子であったが
彼がついに子供から自我をしっかり持った青年になりつつあるのだ)

うそつきで卑屈なにんじんの、正直で勇気ある告白は父親を驚かせた。
そして父親は我慢できずに言ってしまうのだ。

「そんなら、わしが、そいつ(にんじんの母・筆者注)を愛してると思うのか」

これが「にんじん」の育った家族の姿だったのである。
この「私を怯えさせる物語」の普遍性の幹はこれであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年12月27日
読了日 : 2011年5月27日
本棚登録日 : 2011年5月27日

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