数多くの作品を世に送り出し、現代日本を代表する作家とメディアで活躍する女性精神科医という異色の対談。
テーマも「鬱の力」ということで、なかなか興味をそそられます。
対談の主題は、バブルの「躁」時代を過ごした後、現代はその反動で「鬱の時代」というべき時代になっている。
しかし、それは、決してすべてを病気として扱うべきものなわけではなく、その背景や要因を理解して、分類し、良性のものならば、「鬱」のそもそも秘めたるパワーを引き出すような生き方を、世の中全体としてしていくべきだという論旨が展開されます。
なるほど、「鬱蒼(うっそう)とした」というコトバがあるように、そもそもエネルギーを秘めたものなんですよね。
だから「鬱」を一概に悪と決めつけてはいけないというのは、一理あるような気がします。
「鬱」の見極めとは、心因性のものと、脳に起因するものがあり、脳に起因するものはうつ病として治療すべきものだが、心因性のものは、病ではなく、「気遣い」とか「心配り」とか、むしろ良質の心理作用の結果としてのストレスが発現したものであるという定義を披露します。
これもかなり納得感があります。
たぶんこの定義によって、現代に治療を受けている、多くの自称「うつ病患者」は、治療対象ではなくなるはず。
ワタシの精神不安定も、仮に鬱だてしでも、明らかにうつ病ではなく、この心因性鬱。健康的な鬱だと認識できます。それだけでも私のストレスがかなり軽減され、新しいエネルギーにつながる気がします。
右上がりの成長を当たり前にしてきた私たち。
経済成長が踊り場を迎え、イケイケな将来をイメージしにくいいま、大きくパラダイムシフトを果たして、こうした内的なエネルギーの活かし方をみんなが理解して、実行していければ、いままでとは全く違う新しい時代が開けるかも、です。
そんな気付きをもらった一冊でした。
- 感想投稿日 : 2011年9月13日
- 読了日 : 2011年5月16日
- 本棚登録日 : 2011年9月13日
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