にごりえ

著者 :
  • 2012年9月27日発売
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本棚登録 : 80
感想 : 9
5

明治の遊女の悲哀が全編に描かれ、物語的には救いのない作品だが、女性の貧困や孤独が話題になっている現代にも通じるものがある。
令和の今も、読めば身にしみるものを感じることができる。

女性の社会的自立が唱えだされた黎明期の作品で、先にレビューした田山花袋「蒲団」と同じく、ヒロインの運命は男性しだい。
男の身勝手な思惑に翻弄されたあげく、悲しい末路をたどるところは同じ。
しかしそこは女性作家だからか、悲しい設定の人物を物語上で遊ばせるだけではなく、何がしかを訴えようという気迫を感じる。

この作品は文語体で書かれており、現代人には読みづらいのは確かだ。
しかしふだんから読書をしている人ならば、最初こそとっつきづらくても、すぐに難なく読めると思う。
漢字も戦前の繁体字だが、現代漢字と形も似ているし、一度翻訳できてしまえばどうということはない。
(「眞實」➔「真実」、「處」➔「所」など)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2021年12月2日
読了日 : 2021年11月27日
本棚登録日 : 2021年11月27日

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