明治の遊女の悲哀が全編に描かれ、物語的には救いのない作品だが、女性の貧困や孤独が話題になっている現代にも通じるものがある。
令和の今も、読めば身にしみるものを感じることができる。
女性の社会的自立が唱えだされた黎明期の作品で、先にレビューした田山花袋「蒲団」と同じく、ヒロインの運命は男性しだい。
男の身勝手な思惑に翻弄されたあげく、悲しい末路をたどるところは同じ。
しかしそこは女性作家だからか、悲しい設定の人物を物語上で遊ばせるだけではなく、何がしかを訴えようという気迫を感じる。
この作品は文語体で書かれており、現代人には読みづらいのは確かだ。
しかしふだんから読書をしている人ならば、最初こそとっつきづらくても、すぐに難なく読めると思う。
漢字も戦前の繁体字だが、現代漢字と形も似ているし、一度翻訳できてしまえばどうということはない。
(「眞實」➔「真実」、「處」➔「所」など)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2021年12月2日
- 読了日 : 2021年11月27日
- 本棚登録日 : 2021年11月27日
みんなの感想をみる