フリッツ・ライバーは好きな作家である。
そう思い込んでいたのに読んでいたのはファファード&グレイマウザーシリーズだけで、それを自覚して数年前に『妻という名の魔女たち』を読んだ。琴線に触れるものはあったがジャストミートとはいかず、もう一冊なにかを求めて本書へ至る。
本書は読者の教養が試される。めぐりあわせの妙で先日読んだばかりの『ハムレット』についてはかろうじてその試練に耐えたが、「バイロンふうの虚無感」やら「ゴシック的な孤独感」とか言われてもまったくピンとこない。
文学がそれ以前の文学を引き、それを解することこそ教養とされる向きがなきにしもあらずな風潮があるように思う。いわゆる文学について思うことの出来た昨今、オタクのマウントとなにが違うねんと思わなくもない。
表題作『跳躍者の時空』はガミッシュという名前の猫が主人公である。いっとき『テイルチェイサーの歌』を思い出させたが、どこかランクマーの汚穢を感じさせる文章に、勘違いだったと理解した。
ラブクラフトとはその死の直前四ヶ月ほど文通し、作品のレビューとはげましをもらったことに感謝の念を抱き続けたという。ニンゴブルやシールバに感じたラブクラフト臭は気のせいではなかったようだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年9月7日
- 読了日 : 2023年9月7日
- 本棚登録日 : 2023年9月7日
みんなの感想をみる