「次は女の子を産むわ」そう宣言して産み分けに躍起になる妻と、妻の決断に淡い違和感を抱く夫。そして新たに宿した子供の性別は…? 男女の日常に生じたさざ波から見える、人間の愛おしさや強さを描いた五つの短編。
「ある男女をとりまく風景」は一組の夫婦が終わりを迎えるまでの物語。結婚して仕事を辞め家に入ったマスミと、営業に接待に毎日忙しく働くジュン。結婚当初は大学進学や留学を目指していたマスミだが、主婦らしいのんびりとした生活に呑まれそんな意欲をとうに失っていた。そんなマスミに対して苛立ちが募ったジュンは、ついに家を出る。そして二人が話し合いの為再開した席で、物語が全てひっくり返る事実が明らかになる。本当に「やられた!」との一言に尽きる。私の固定観念を再認識させられた。
どの物語も男女の関係が危うくなる瞬間を描きながらも、最後は温かな気持ちに包まれる。夫婦であっても別々の人間であり、互いに完全にわかりあえることはない。そこに悲しみが生まれるきっかけが潜んでいる。それでも気持ちが通じる瞬間や幸せを共有できる瞬間に希望を抱いて、寄りそって生きていくのだろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年4月20日
- 読了日 : 2014年4月13日
- 本棚登録日 : 2014年4月20日
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