最初の5ページくらいが勝負かもしれない。ここでフォルム・ロマヌム(今のフォロ・ロマーノ)の雑踏や人々の声や日射しを感じられれば、あとはすんなり物語の世界にはいっていけるはず。古代ローマが舞台なので、古い地名(この巻ではロンドンやテムズ川も旧名で登場)や慣習に馴染みがないと、逆にちょっと苦しいかも。
ローマで「密偵」をしている軍人上がりのファルコが大掛かりな銀の横流しについて調査していくお話。ふと気がつくと、あっさりブリテン島に行ってしまったり(ローマから2週間くらいらしい)、あっさり鉱山に潜入して(数か月も)死にそうになったり、展開は油断できません。その間、発端の殺人事件が、ことあるごとに彼の心を締め付け、苦しめます。
皮肉屋で、自嘲的だがどうやら心優しいらしいファルコ。この商売の人間にしては母親や親族,友人、知人たちとのつながりの深さがそこここに顔をのぞかせます。とくに戦闘で亡くなった兄には深い思いがあるようです。女遊びもいろいろしている割には純情で、29歳から30歳という年齢設定にしては、何やらかわいい男です。一方、登場する女性陣はなかなか強く、個性的でおおむね魅力的。やはり女性のミステリは高感度の高い人物が多いような気がします。
全体として現代的な展開、いつかドラマにならないかなどと妄想します。チネチッタには素晴らしいセットもあるし、カドフェルだってドラマになったのだから、けっこういけると思うのですが、さて。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
古代
- 感想投稿日 : 2013年2月21日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2013年2月21日
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