星の子 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2019年12月6日発売)
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本棚登録 : 1050
感想 : 139
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リアルだった。
子供視点、それも宗教を信仰してる家族の子供視点だから自分の生活してる世界が普通と思ってるところがリアルだった。ちひろはいつもお腹を空かせていたり、両親はいつもみどりのジャージを着て外見に気を遣わなかったり、法要で食べるお弁当を楽しみにしていたり、ちひろ視点でかかれる文の中でも信仰のせいで家庭が貧しくなっていく様子が窺えた。ちひろは小さい頃から素直に思った事を言えて、思春期に入っても自分の事や家庭を何も恥ずかしいとは思ってない点が、ちひろがいる世界をちひろ自身が何も疑わなかった事なんだと思った。
ただ、先生に送ってもらった時の両親をみてから変わり始めてそこから圧倒的に何かが変わるわけでもない所が現実的だった。また、教室で先に怒られるシーンは居た堪れない気持ちになった。好きな人から嫌われている事、人目に晒されて浴びる自分を否定される言葉は中学生の女の子にしてみたら相当なトラウマになりそうだと思った。
上っ面だけの人気者の先生の性格の悪さを感じて、こんな先生がどこの学校でもいるんじゃないかと思わせた。
反面、ちひろのまわりのキャラクターは、わりと実直な人が多くて好きだと思った。例えば、なべちゃんはちひろの家庭のこともわかった上で付き合っていて、一口貰った水を不味いって言うところが好きだ。なべちゃんの彼氏の林田くんも両親をみてかっぱだと思ったと素直に謝るところが可愛らしい。ちひろの姉のまーちゃんとちひろが夜中にパンを食べながら話をするシーンも好きだと思った。
ちひろの両親も決して悪い人ではないし、ちひろの周りの集会にくる子達も悪い人ではない。
ただ、ちひろの両親は心の拠り所がそこしかなかっただけ。わかっててもやめられるものでもないのだと思った。
最後のシーンはとても泣けた。見えてるはずの流れ星を見えないフリをして時間を稼ぐ。
宗教の粗を見えないフリをしている両親とリンクした。
会報と同じポーズでちーちゃんを抱きしめる両親。
なにを考えているのだろう

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月5日
読了日 : 2020年10月5日
本棚登録日 : 2020年10月5日

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コメント 1件

子熊さんのコメント
2021/01/19

エンディングの解釈が秀逸です!勉強になりました。

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