カドフェス2017対象本。
芝浦工業大学の小説創作支援ソフトを使用した、中村航と中田永一の合作小説。
両著者の作品を数冊ずつは読んでいる私からすると、いろいろな手が加わっていることもあって、それぞれの味が消えてしまっているのではないかと思わないでもない。
駄作では決してないが、そこそこの作品という印象。
不幸を呼び寄せてしまうという主人公像は、中田永一っぽい。
対してヒロインの奔放さというか、軽さというか、主人公に運河でキスしてしまうようなところは、中村航っぽい。
「ああもう、そういう人を惑わすようなことしないでくれよ!」っていうのが、中村航には多い気がする。
執筆は、両著者でプロットを作ったあと、交互に進めていったそう。
冒頭は中田永一で、「知識の橋」とか言い出すところは中村航っぽい。
あと、ラストはとてもきれいだったが、これは着地の上手な中田永一の手によるものではないかと思う。
七瀬が色とりどりの風船を背にしているところとか、風船が割れるところとか。
偉そうに書いておいて、実際は全部逆だったら恥ずかしいな(笑)。
とりあえず、「ああ、これはこっちの著者っぽいな」と感じるところはいくつかあった。
ただ、中村航の冗長な甘さとか、中田永一の切なさとか、それぞれの持ち味を強く感じることは少なかったように思う。
特に私は中田永一の方が好きなので、彼が全編書いたらどうなるんだろう、と思わずにいられない。
とはいえ、一定の成功の基準は満たしているだろうし、面白い取り組みだった。
- 感想投稿日 : 2020年10月7日
- 読了日 : 2017年7月1日
- 本棚登録日 : 2020年10月7日
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