税務署を舞台にした小説ではあるが、良くも悪くも細かい仕事内容にはあまりフォーカスしておらず、割と想像の範疇にある。だから、税務署の仕事の世界を知りたいという欲求はあまり満たせないかもしれない。
しかし、滞納者には滞納者の人生があるというところを重視しているようで、それが物語に奥行きを持たせている。ただの勧善懲悪ではなくて、滞納者にはこんな悲劇が…みたいな単純なお涙頂戴でもない。
滞納者にもこれまで生きてきた人生の厚みがあるし、一方で人間なのだから衝動的に変化が起こることもある。
深樹が滞納者を前にお役所対応をしたことを恥じたのと同じようにハッとさせられた。
どんな仕事でもそうなんだよな。
客というのはただお金を持ってくるカモではなくて、その人にも生活があるということを理解してあげないと、いい取引相手にはなれない。
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- 感想投稿日 : 2023年12月4日
- 読了日 : 2023年11月29日
- 本棚登録日 : 2021年1月21日
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