敵対者達との終わり方はアッサリと終わった印象はあるが、シリーズの縦軸となっていた小比類巻の妻の真実に関して明らかになり、改めて登場人物達の所業に戦慄したと同時に切なくなるような真相ではあった。結局、全5巻を読んでわかったのは以下のことである。主人公である小比類巻を始め何人かの登場人物や事件関係者は「生」と「死」にこだわりがあって『大切な人を生き返らせたい』『不老不死の方法を見つけたい』と願い、科学を用いて倫理を超えてしまう愚かさ、その陰で両親を持たずに作り出された生命達(体細胞クローンや細胞を分化させ増殖させて生まれた人工生命体)が『何故生まれてきたのか』と苦悩しつつも生まれてきた結果、何かをしようとする話を作者の方は描きたかったのかもしれない。
それが4巻に登場する奥田の細胞から作り出された怪物の苦悩や5巻に登場する小宮(榊原茂吉のクローン)がとった選択なのかなと思った。小宮はウイルスによって処女懐胎させられた少女よりも処女懐胎の結果、生まれてくる少女のクローンに同情したのだろう。ただやはり事件の解決方法がいきなりすぎるところや登場人物の人物像があまり魅力的に映らないと感じるところはある。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年7月22日
- 読了日 : 2023年6月4日
- 本棚登録日 : 2023年6月3日
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