☆★☆*** 発掘良品:上質なサスペンス ***★☆
本作はお目にかかることの少ないアルゼンチン映画だが同国のアカデミー賞の「作品」「監督」「主演男優賞・女優賞」を始めとする主要13部門を受賞した他に、第82回アカデミー外国語映画賞にも輝いている。
*登場人物は、刑事裁判所を定年退職し老後の孤独な人生を送っているベンハミン。
*そして嘗ての職場の上司で、今は〝女性検事に昇格〟しているイレーネ。
職務上での上下関係が男女逆という設定のもと、
昔、惹かれ合っていたのだ…という、『大人の純愛』が根底に美しく漂っているのが素晴らしい。
孤独な時間を持て余したベンハミンは今も尚、心の中でモヤモヤとしている過去の未解決事件を題材に、「小説」を書こうと思い立つ。
題材にしようとする某事件の情報を収集するために、イレーネのもとを訪れるベンハミン。
■・・・そこで二人は、25年前に起きた事件のことを一緒に思いだしていくことになる ■
ーーその事件とはーー
結婚して間もない銀行員の若妻が、何者かによって自宅で暴行されたうえ殺害されるという何とも忌まわしい事件だった。
その事件を掘りおこしていくうちに次第に様々な断片が見えてくる。
被害者である夫が亡き妻に抱き続けている《不変の愛》が傷ましい。
その一方でベンハミンは、アルコール中毒の同僚に手をやいている。
そんなダメな同僚を思い遣るベンハミンの優しさや、エリート女性検事のイレーネが、ベンハミンに未だ持ち続けている想い、etc...
それらが巧みに絡み合いながら物語は進む。
惨忍な事件の真相が明らかになっていくのと並行し、そうしたナイーブな心の描写が、実に巧く折り重なり合って丁寧に描かれている、といった印象をもてる。
ベンハミンとイレーネが二人して文字を読むシーン、二人が互いにシニアグラス(老眼)を付けたり外したりする。これは今の私がそうであるから言える感想だが、
この年齢に達している男女の日常所作が自然体、等身大、リアルに捉えていて関心した。
派手な宣伝など無かったような作品であるので、期待も何も持ち合わせずWOWOWにて観賞。
が、驚くことに本作は「隠れた逸品」と言える出来映えだ。発掘良品の感激とはまさにこういうことかと思う。
本作はサスペンスファンを唸らせるアルゼンチン発の良質な作品と言えよう。
- 感想投稿日 : 2014年10月11日
- 読了日 : 2014年10月11日
- 本棚登録日 : 2014年10月11日
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