戦争 (岩波現代文庫 社会 155)

著者 :
  • 岩波書店 (2007年7月18日発売)
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感想 : 6

大岡昇平の戦争前後に渡る体験談。野火と俘虜記を読了された方にお薦めします。

内容はやはり暗いのですが、口語体なのでどこかしれっとしていて、却って現実味を持てるというか、「生の声」といったような近しい感覚で読めました。
大岡昇平がスタンダリアンだと知って『野火』が理解できたような気がします。


特に俘虜体験の章が興味深いです。
「初めは俘虜生活そのものを書くつもりだったんですが、結局、収容所の中でアメリカ人に飼われてキャッキャといってた状態と、民主主義だとかなんとかいわれてワイワイやってる現在の状態(GHQ占領期)と同じではなかろうか、どうもあらゆる点でよく似ているぞということに気がつく訳ですね」
「日本全体が強制収容所なんだ」(マッカーサー)
「戦場から我々には何も残らなかったが、俘虜生活からは確かに残ったものがある。そのものは時々私に囁く。「お前は今でも俘虜ではないか」と」
「俘虜収容所の事実を籍りて、占領下の社会を風刺するのが意図であった」


あとがきにはインタビューをした70年代当時の風潮が色濃く窺えます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 近代史・戦史関係
感想投稿日 : 2011年7月20日
読了日 : 2011年7月20日
本棚登録日 : 2011年7月20日

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