故紙処理係のハニチャは毎日どこからともなく運び込まれてくる大量の故紙を潰すのが生業である。
時折故紙の中に美しい本を見つけてはそれを救い出し、ビールを煽っては青年と老人(イエスと老子)の幻を見る。
彼が潰している「故紙」の正体は、共産党政権の下禁じられた書なのだ、ということに途中まで読んで気がついた。
表現の自由も知る自由も制限された世界の底辺で、ひっそりと知を貪り「心ならず教養が身についてしまった」ハニチャ。
一方で昔愛した娘の名前も思い出せないハニチャ。
娘はナチズムの犠牲者だった。
生き延びたハニチャはスターリニズムの犠牲者である。
強大な国に囲まれ、蹂躙されてきた国の歴史がそこにはある。
“三十五年間、僕は故紙に埋もれて働いているーこれはそんな僕のラブストーリーだ”
こんなラブストーリー反則や。
不条理や。
せや、これがチェコ文学や。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年1月7日
- 読了日 : 2015年11月15日
- 本棚登録日 : 2015年11月15日
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