あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2)

  • 松籟社 (2007年12月14日発売)
4.05
  • (34)
  • (19)
  • (19)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 396
感想 : 37
5

故紙処理係のハニチャは毎日どこからともなく運び込まれてくる大量の故紙を潰すのが生業である。
時折故紙の中に美しい本を見つけてはそれを救い出し、ビールを煽っては青年と老人(イエスと老子)の幻を見る。

彼が潰している「故紙」の正体は、共産党政権の下禁じられた書なのだ、ということに途中まで読んで気がついた。

表現の自由も知る自由も制限された世界の底辺で、ひっそりと知を貪り「心ならず教養が身についてしまった」ハニチャ。
一方で昔愛した娘の名前も思い出せないハニチャ。

娘はナチズムの犠牲者だった。
生き延びたハニチャはスターリニズムの犠牲者である。

強大な国に囲まれ、蹂躙されてきた国の歴史がそこにはある。

“三十五年間、僕は故紙に埋もれて働いているーこれはそんな僕のラブストーリーだ”

こんなラブストーリー反則や。
不条理や。
せや、これがチェコ文学や。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年1月7日
読了日 : 2015年11月15日
本棚登録日 : 2015年11月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする