アードマン連結体 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (2010年4月30日発売)
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感想 : 15
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ナンシー・クレス初読。『ナノテクが町にやってきた』、『オレンジの値段』、『アードマン連結体』、『初飛行』、『進化』、『齢の泉』、『マリーゴールド・アウトレット』、『わが母は踊る』の全8篇が収められている。1989年から2008年に発表された作品を日本独自に編集されたものであるため、様々な種類の話がごちゃごちゃと詰め込まれていて、あまり統一感はない。
『ナノテクが町にやってきた』:何でも造れるナノマシンがクリフォードフォールズという町に4台支給される。やがて人々はナノマシンに依存するようになり、働かない人が増え、税収が減り、政府が徐々に機能しなくなる。それに背を向け、生きてゆくのに必要なものをナノマシンで造ることを禁じる人たちが集まって、共同体を作り始める。本作の最後で主題が明確にされ、ナノテクは人の選別装置であり、宝くじが当たって幸せになる人とかえって不幸になる人がいるのと同じようなものと記されている。読みやすい作品。
『アードマン連結体』:真空フラックスの中を移動する恒星間宇宙船の話とセント・セバスチャン(病院付の老人ホームのようなもの)のアードマン博士ら80歳以上の老人に起きる発作の話。両者がどうつながっているのか私には理解できず。結局、老人たちは超意識と一つになるかどうか選択を迫られ、ある人は融合してこの世を去り、ある人は拒否して元に戻る。残念ながら、ストーリーが掴みづらく、何を言いたいのかよくわからなかった。
『齢の泉』:大金持ちの老人(86歳)マックス・フィーダーは、軍人時代に1週間愛を交わしたキプロスの娼婦ダリアに会いにシークウェン(老化を20年間食い止めるD治療を行う施設)を訪れる。ダリアは、18歳のまま老いない若さの泉ともいうべき腫瘍を持っている。その腫瘍は予備の幹細胞の倉庫のようなもので、それを商業利用してD治療を行うことができる。その過程で、マックスの暗い過去が明かされたり、アルコーゼル連邦捜査官に厳しい追及を受けたりといったストーリーが展開される。86歳のじいさんの妄執というかリビドーの発露みたいな話で楽しめたが、訳文中にガジョ、マリメ、ウォルタチャといった聞き慣れない言葉がそのまま使われていて読みにくかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2014年5月17日
読了日 : 2014年5月17日
本棚登録日 : 2014年1月12日

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