2015年11月に亡くなった水木しげる氏が、自身の戦争体験を基に1973年に発表した長編戦記マンガ。1995年文庫化。2009年にフランス・アングレーム国際マンガフェスティバル遺産賞を受賞している。
物語の玉砕は、ニューブリテン島ズンゲン(物語ではバイエン)で成瀬大隊(物語では田所支隊)が行ったものとして、戦史上も有名な事件である。二度目の玉砕は現実にはなかったことなど、一部に創作を加えているが、水木氏によれば「90%は事実」だという。水木氏自身は同大隊に所属していたが、空襲による左手切断とマラリアによって生き延びて帰還した。
太平洋戦争時の日本軍において、軍上層部が下した玉砕や特攻などの合理性のない命令(作戦とすら言えない)は100%批判されるべきものであるが、その命令を受けた兵士がどのような行動をとるべきだったかについては唯一の答はないのではあるまいか。“潔い”か否かという基準で見れば、本作品の1回目の玉砕を生き延びた兵士も、ベストセラーになった『永遠のゼロ』の宮部久蔵も(宮部は最後には特攻を志願して戦死するが)、“潔くない”のかも知れないが、“正しい”か“正しくない”かについては、誰も解答を出すことはできないだろう。
ただ、偶々生き延びて帰還した水木氏が、マンガという受け入れやすい表現形式で、戦争で起った悲劇を多くの人々に知らしめたことの意義は間違いなく大きく、それに関しては我々は幸運だったと言うことはできよう。
(2016年1月了)
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- 感想投稿日 : 2016年1月16日
- 読了日 : 2016年2月12日
- 本棚登録日 : 2016年1月16日
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