地上に星座をつくる

著者 :
  • 新潮社 (2020年11月26日発売)
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石川直樹(1977年~)氏は、日本 5人目、世界 85人目の七大陸最高峰登頂(2001年、当時世界最年少記録) 、8000メートル峰5座(6回)登頂(エベレストに2回登頂)などの実績をもつ冒険家(本人は「冒険家」と呼ばれることに違和感があると言っているが)、写真家。
本書は、月刊誌「新潮」に2012~19年に連載された「地上に星座をつくる」を時系列に一冊にまとめたもので、著者は「あとがき」で「都度、1ヶ月間に起こった最も印象的な出来事について毎月書いてきたので、忘れっぽい自分にとって、この連載は自分の歩みそのものであり、生の記憶と直結しているといってもいい」と記している。
私はこれまで著者の、『最後の冒険家』(2008年開高健ノンフィクション賞受賞)のほか、『全ての装備を知恵に置き換えること』(2005年)、『いま生きているという冒険』(2006年)などのエッセイ・紀行集を読んできたが、常に驚き感心するのは、著者の幅広い好奇心と人間離れした行動力、そこから何かを感じ取る鋭い感性、そしてそれを他人に伝える文章表現力であり、本書においてもそれらは遺憾なく発揮されている。
本書に登場する場所は、山形、ネパール、バングラデシュ、ムスタン(ネパール)、国東半島、韓国、ペルー、福島、ヒマラヤ、チベット、岩手、富士山、パリ、斜里、サハリン、ベトナム、アルバータ(カナダ)、パキスタン、新潟、アメリカ、沖縄、オーストラリア、能登、知床、札幌、白老、ノルウェー、富山、鹿児島、シベリア、ユーコン、アラスカ、宮古島・・・と、例によって、国内外の実に様々な国・地域である。
長引くコロナ禍の中で、ついつい内向きの発想になってしまう昨今だが、本書からは大いに元気を与えてもらえたし、また、著者が『いま生きているという冒険』の中で「冒険とは何か?」について語っていた、「現実に何を体験するか、どこに行くかということはさして重要ではないのです。心を揺さぶる何かに向かいあっているか、ということがもっとも大切なことだとぼくは思います。」という件を、思い出すことができた。
自らの「冒険心」に刺激をもらえるエッセイ集である。
(2020年12月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年12月7日
読了日 : 2020年12月7日
本棚登録日 : 2020年12月6日

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