地球の履歴書 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社 (2015年9月25日発売)
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大河内直彦(1966年~)氏は、東大大学院博士課程修了、京大、北大、米国ウッズホール海洋研究所などを経て、海洋研究開発機構生物地球化学研究分野・分野長。
本書は、季刊誌「考える人」の2013年春号~2015年冬号の連載をまとめ、2015年に出版されたものである。
著者は「まえがき」で、本書について、「紆余曲折を経て発展を遂げてきた科学を通して、私たちの暮らす星を覗いた短編を集めたものである。地球上の珍奇な場所や驚くべき出来事について、科学の視点を交えながら紹介する八つのストーリーである」と語っており、初出の連載の性格から、体系だった地球の地理・地形や歴史とはなっていないのだが、取り上げられた「珍奇な場所や驚くべき出来事」は実に幅広く、読み終えてみると、地球の地理・地形や歴史の見え方が、僅かながらも変わったような気さえする。
例えば、以下のような場所・出来事が取り上げられている。
第1章:How Deep Is The Ocean?・・・古代のエラトステネスとポセイドニウスの地球の大きさの測定、アレキサンダー大王やマゼランの海の深さの測定
第2章:謎を解く鍵は海底に落ちていた・・・ダーウィンが唱えたサンゴ礁の進化(裾礁→堡礁→環礁)、プレート・テクトニクス理論
第3章:海底が見える時代・・・サイドスキャン・ソナーを使った現代版トレジャー・ハンティング、鬼界カルデラと姶良カルデラ、ピナツボ火山の噴火
第4章:秋吉台、ミケランジェロ、石油・・・秋吉台の石灰岩地形、インド島のユーラシア大陸衝突とヒマラヤ山脈の形成、ユカタン半島への隕石の衝突
第5章:南極の不思議・・・南極点の移動、アムンセンとスコットの南極点到達競争
第6章:海が陸と出会う場所・・・地球で繰り返す温暖・寒冷化と海面の上下動、東京湾海底に残る巨大河川・古東京川、黒海の海面上昇とノアの洪水伝説、
第7章:塩の惑星・・・メッシニアン塩分危機(600万年前に、地殻変動でジブラルタル海峡が地続きとなり、地中海が干上がった出来事)
第8章:地下からの手紙・・・六甲山周辺で見られた阪神淡路大震災の前兆現象、カメルーンのニオス湖の悲劇(1986年に、湖底から湧き出た二酸化炭素で湖畔の住民の大半が死んだ出来事)
我々の住む地球についての知的好奇心を掻き立て、また、満たしてくれる一冊である。
(2021年6月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年6月9日
読了日 : 2021年6月9日
本棚登録日 : 2021年4月29日

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