〔文庫〕生命の暗号 (サンマーク文庫 E- 37 エヴァ・シリーズ)

著者 :
  • サンマーク出版 (2004年2月17日発売)
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村上和雄(1936~2021年)氏は、京大農学部卒、同大学院農学研究科博士課程修了、米オレゴン医科大学研究員、米ヴァンダービルト大学医学部助教授、筑波大学応用生物化学系教授、筑波大学遺伝子実験センター長、同大学先端学際領域研究センター長、同大学名誉教授、(財)国際科学振興財団専務理事、同バイオ研究所所長、茨城県工業技術センター長、全日本家庭教育研究会総裁等を歴任した、分子生物学者。1983年に、高血圧の原因となる酵素「レニン」の遺伝子解読に成功し、世界的に注目された。日本学士院賞受賞。瑞宝中綬章受章。
また、著者は、生命の存在は、ダーウィンの進化論では説明できないとし、「サムシング・グレート」なるものの存在を信じる、所謂「知的設計論者」(「知的設計論」は「intelligent design」とも呼ばれ、生物や宇宙の構造の複雑さや緻密さを根拠に、「知性ある何か」によって生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする理論)に近い立場を取る。
本書は、1997年に出版され、2004年に文庫化された、著者の主著ともいえるロング&ベストセラー。
私は、文系キャリアながら、生命科学や遺伝子工学は関心のある分野の一つで、これまで関連するいくつもの本(新書等の一般書だが)を読んでいるが、著者に関しては、小川洋子の『科学の扉をノックする』の中で読んだことがあるだけで、今般新古書店で偶々目にして、手に取った。
著者は、「私は科学と宗教は同根と思っている」と書き、その主な主張は、「サムシング・グレート」が作った30億の情報が入っている遺伝子の能力を最大限に活かす(使うべき遺伝子をONにし、使うべきではない遺伝子をOFFにする)ことが大事であり、そのためには、「志を高く」、「感謝して生きる」、「プラス発想をする」の3つが重要、ということである。
そして、それらが、著者の科学者としての知見・実績に基づいて書かれている点が、スピリチュアル系の本と一線を画している。
一方、私は基本的に合理主義者で(但し、科学技術の発達が人類を幸福にすると考える「近代科学至上主義」ではない)、世界的な進化生物学者リチャード・ドーキンスの書いた『さらば、神よ』(文庫では『神のいない世界の歩き方』)をはじめとする著作を支持する立場で、宗教を否定はしないが、それは使われ方が大事と考えている。(原理的な一神教が、世界の人々の対立の原因の一つになっていることは、論を俟たない)
本書のような本は、読まれ方が大事と思われる。
(2024年1月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年1月8日
読了日 : 2024年1月8日
本棚登録日 : 2023年3月4日

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