ぼくの村は戦場だった。

著者 :
  • マガジンハウス (2006年11月22日発売)
4.11
  • (21)
  • (24)
  • (10)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 221
感想 : 34
4

2012年8月にシリア内戦取材中に政府軍の銃撃に倒れたフリージャーナリスト山本美香の2006年の著作。
フリーとなった1996年以降に訪れた、アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラクという紛争地の惨状とそこに暮らす人々の日々の様子を、多数のカラー写真とともに伝えている。
著者が亡くなったときも、先日イスラム国に後藤健二氏が捕まり殺されたときも、少なからぬ人々から「何故そのような危険な地域にわざわざ行くのか」との声が上がったり、TVニュースのゲストの専門家からですら「今後再発を防ぐためには、そのような地域に近寄らなければいい」というコメントが聞かれる。
しかし、世界があらゆる面で繋がりグローバル化した現代において、望む望まないに係わらず、我々はそうした紛争の情報に触れるし、輸出入品や金融市場等を通して影響も受ける。即ち、各地の紛争は別世界の話ではないのである。日本が国家として、こうした問題にどう係わっていくのかについては、様々な観点からの議論が必要だと思うが、個人レベルでは、せめて何が起こっているのかを知り、そこに生きる人々の思いを共有することが大切なのではないか。
日本に暮らす自分にできることは限られるが、著者が「目をそらしても現実が変わるわけではない。そうであるなら、目を凝らして、耳を澄ませば、今まで見えなかったこと、聞こえなかったことに気づくだろう。戦場で何が起きているのかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何かが変わるかもしれない。そう信じて紛争地を歩いている」という、その信念を心に刻んでおきたいと思う。
(2014年5月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年1月11日
読了日 : 2016年2月12日
本棚登録日 : 2016年1月11日

みんなの感想をみる

ツイートする