江戸から明治へ。
時代の移り変わりと共に、鎖国を解いた日本へ次々と流れ込む西欧文化。
新しい日本を造るため、古き佳き日本を捨て洗練された西欧技術を取り入れようと試みる政府に対しストップをかける一人の建築家・妻木頼黄の物語。
右にならえ、とばかりに何でもかんでも西欧建築の真似をするのではなく、日本の気候風土に適した日本古来の建築様式を巧く融合させようとする心意気がいい。
常に現場で働く職人たちに敬意を払う真摯な姿勢。職人たちに対する物腰はいつも柔らかい。けれどそこに妥協は一切ない。
強さと柔らかさをバランスよく兼ね備えた妻木の人柄がとても魅力的。
建物の揺れに対する強さの中心を示す”剛心”のように、いかなる試練を課されても全くブレない心が妻木の姿勢を崩さない。
「新たな技術を取り入れながらも、この国の、自分たちの根源を忘れずに引き継いでいくような建物にしたいと思っている。そういう建物がいくつも建つことで、江戸のような、心地いい街並みがきっとできる。子供たちの、またその子供たちの世代まで、誇りになるような街がね」
令和の時代を生きる我々の目の前に広がる景色は、妻木たち先人の強い信念が生み出した技と努力の結晶。
妻木から受け継いだ景色を、また次の時代へと引き渡して行かなければならないと強く思った。
妻木を陰ながら支える妻が更に魅力的だった。
木内作品に登場する女性たちは凛とした人が多くて好き。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
木内昇
- 感想投稿日 : 2022年2月7日
- 読了日 : 2022年2月7日
- 本棚登録日 : 2022年2月1日
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