眠れる美女 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1967年11月28日発売)
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本棚登録 : 3811
感想 : 347
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『眠れる美女』『片腕』『散りぬるを』の3編から成る短編集。
『眠れる美女』『片腕』が印象的。
2作品共、性的描写は出てこないのに、文章全体から醸し出される官能的な妖しさにドキドキしてしまう。

『眠れる美女』に心奪われ年甲斐もなくオタオタする江口老人。
その汚れなき美しい肌に触れたくてもなかなか触れることもできず、添い寝の途中で起きはしないかとハラハラしっぱなし。
美女の弾ける若さに対して己の老いを痛感する。
そして眠れる美女の隣で、江口老人は過去の女達に思いを馳せる。
ラストの宿の女の一言はとても衝撃的。

「片腕を一晩お貸ししてもいいわ」娘のサラリとした一言で始まる『片腕』。
尋常ではない設定にも関わらずコミカルに物語が進むので違和感なく読める。
男は娘の可憐なやわらかい腕を事細かく観察し堪能する。
こちらの男もまた、娘の体の一部を娘の身代わりのようにもてなし添い寝して喜びを感じる反面、己の孤独を痛感する。

老い、孤独…年老いた男達の哀愁をチクリと鮮やかに皮肉る川端康成の筆力はやはりただ者ではない、と唸るしかない。
そして解説があの三島由紀夫…最後の最後まで気の抜けない贅沢な文庫本。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年4月13日
読了日 : 2018年4月13日
本棚登録日 : 2018年4月12日

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