さだまさしさんの歌のように、優しく温かな余韻に包まれた短編集。
親子、恋人、夫婦…当たり前のように存在していた人と人との絆の破綻。
それらが静かにゆっくりと再生していく過程が優しく綴られている。
表題作の、失明の恐怖に押し潰されそうになりながら、それでも苦しみから解き放たれた瞬間の、悟りを開く様がとても良かった。
「解夏」…とても素敵な言葉。
そして最後の短編『サクラサク』。
一つ屋根の下に住みながら心はバラバラだった家族が、年老いた父の痴呆により徐々に歩み寄っていく。
「人間ってのはよ、心で生きてるからよ、滞った場所を、どんと叩かれたら正気に戻るんだ」
主人公の友人の涙ながらの励ましの言葉。
人にとって体より心の不調の方がより堪えるものだとしみじみ思う。
思うようにならず、大人も子供の頃のよう泣きたくなる時もある。
そんな時に寄り添い自分を認めてくれる身近な人の存在の有りがたさが身に染みた。
さださんの優しい歌声が今にも聴こえてきそうだった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年6月6日
- 読了日 : 2018年6月6日
- 本棚登録日 : 2018年6月5日
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