祖母が孫娘と共に祖母の故郷を訪れる。
それは祖母の古い記憶を辿る旅でもあった。
いいな、こういうの。
私も年老いた時にそんな旅をしてみたい。
祖母が生業としている金継ぎ。
器等の欠けた部分を繕うその仕事は、欠けた部分を直して元通りにするだけでなく、敢えて色等も変えて継ぎ目や繕った跡を残し、新たな景色を楽しむものだという。
人生も同じだ。
思い通りにいかないからといって無理に繕う必要はない。
継ぎ足して変えていってもよいではないか。
目の前に伸びる道を真っ直ぐ進めばよいと思っていたのに、思いがけず予想外の方向へ曲がることもある。
そんな時は元通りの方向へわざわざ戻らなくてもよいではないか。
曲がったその先にあるものがその人にとって新たな道標となることもある。
金継ぎのように、素敵な器に生まれ変われるかもしれない。
祖母・母・孫と三代の女性の生き方はその時代背景で異なるものとなった。
幼い頃の思い出にすがりたくなることも時にはあるけれど、各々の行きたい道を手探りで歩む三人の姿はとても清々しかった。
ほしおさんの物語は柔らかくて優しい気持ちになれる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ほしおさなえ
- 感想投稿日 : 2020年7月7日
- 読了日 : 2020年7月6日
- 本棚登録日 : 2020年7月5日
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