現・防衛大学校校長の五百旗頭真以下、京大系の外交史研究者たちによる戦後日本外交史の教科書である。
【構成】
序 章 戦後日本外交の構図(五百旗頭真)
1 近代日本の外交伝統
2 本書の構成
第1章 占領下日本の「外交」(五百旗頭真)
1 米国における対日占領政策の形成
2 占領下日本の「外交」とは
3 天皇と日本政府を通しての間接統治
4 占領改革をめぐる交渉
5 冷戦下における日本の安全保障
第2章 独立国の条件(坂元一哉)
1 サンフランシスコ講和への道
2 吉田路線とアメリカ
3 鳩山政権と外交地平拡大の模索
4 岸政権と戦後外交体制の確立
第3章 経済大国の外交の原型(田所昌幸)
1 戦後憲法体制の「確立」と日本
2 経済大国への道
3 日米「パートナーシップ」の展開
4 未解決の戦後処理
第4章 自立的強調の模索(中西寛)
1 落日の佐藤政権
2 デタント期の日本外交
3 緊張の再燃と政策協調
第5章 「国際国家」の使命と苦悩(村田晃嗣)
1 日米「同盟」への道
2 日米関係の同盟化とライバル化
3 日本外交のグローバル化
4 冷戦の終焉
第6章 冷戦後の日本外交(五百旗頭真)
1 「冷戦の勝者」日本の「敗北」
2 冷戦後外交の模索
3 危機と安全保障の季節
4 「協力的協調外交」の時代
5 東アジアの経済危機と日本
6 衝撃の21世紀
結 章 戦後日本外交とは何か(五百旗頭真)
1 歴史
2 戦後日本の三つの政治外交路線
3 吉田路線の本流化
4 「日米関係の深化」と「外交地平の拡大」
5 危機の1970年代
6 経済国家のピーク
7 冷戦後の国際変動と日本外交
第4章までと第5章以降で、読んだ時期に少し開きがあるので、内容を十分に把握し切れていない部分があるが、全体を通してかなりバランスのとれた通史であると言えるだろう。
戦後の日本外交のもどかしさは、取り得る選択肢がそもそも大幅に限定されているということにあるだろう。終戦以来の中国・朝鮮半島の不正常な関係、アメリカの軍事戦略と国内の法的・政治的・経済的制約などによってがんじがらめになったその先には、冷戦下の戦後平和主義の発想が生まれた。巷間の外交認識はこれに端を発する保革の対立で説明されることが少なくなく、現実の事態の推移を検討するということは滅多に行われていない。
本書はそのような単純でイデオロギー的な理解を排して、現実主義的なアメリカとの利害関係、アジア外交へのアプローチと失敗を重ねた日本外交の実像を年代ごとのダイナミズムを念頭に置きながら論じている。
大学の法学部・経済学部あたりに在籍している人は読んでおくべきだろう。もし、全部読み通す気力が無いなら、序章と結章だけ読んでも得るところはあるはずなので是非一読をおすすめする。
- 感想投稿日 : 2011年4月2日
- 読了日 : 2008年6月6日
- 本棚登録日 : 2009年12月30日
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