夜の谷を行く

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年3月31日発売)
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感想 : 126
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史実を元に連合赤軍にいたという架空の女性の今を語ることで、あの連合赤軍にいた日々がどんなものだったのか、そして現代になった今、彼女たちはどう生きていくのかをリアルに感じることができた。桐野さんだからこその女性の描き方だなと思ったが、思ったより過激にならずソフトだった気がした。
少しひっかかったのは、主人公である啓子が赤軍派に入って、危険な生き方をしてまでそこにいる理由がしっかりと語られていない気がしたこと。国に対する反発、反社会的思想など啓子の思いがイマイチ見えてこない。何となくそこにいてしまったという感じ。そのため子供を革命の戦士にと言われてもピンと来なかったし、赤軍派にいた過去により周囲に迷惑をかけても自分は悪くないと保身的になる姿には共感できるものがほとんどなかった。
それとも赤軍派にいた女性はこういう感じだったと作者が作為的に作った主人公だったのだろうか。
ひとつ印象に残ったのは姪が啓子をテロリストと言ったとき、なるほど今はそういう風に見えるのかと時代の変化を感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年6月27日
読了日 : 2017年6月13日
本棚登録日 : 2017年6月13日

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