何気ない言葉で、心のつかえがとれていくそんな短編が8篇収録された本。西加奈子さんの作品は、読みたいと思いつつ、なかなか手が出なかったのですが、短めな短編集ということもあり、読んでみました。
生きにくさや、不安を感じる中、出会った人や昔から知っていた人からもらった一言で、楽になっていく。自分の本当の気持ちとは、違った行動をしているのではないか、周りが自分をどう思っているのか、様々な気持ちが描かれるが、一度は感じるのではないかと思う。
それぞれ思うところにある話だが、特に「孫係」が好きな話だ。おじいちゃんが1ヶ月一緒に住むことになり、窮屈さを感じている孫娘。日ごろの思いも相まって、ため息の出る生活。そんな気持ちのひとりごとをおじいちゃんに聞かれてたら、実は。。。という話。おじいちゃんの語る人の生き方やそれによって楽になってくる孫娘がよい。そんなことがないと思う人もいると思うが、自分は、そんな風に感じることもあるので、身に染みる感じだった。
「あねご」や「ドブロニク」のいつの間にか、こう生きているけどという感じもわかる。どちらもその生き方にちょっと疲れた感じの時に出会う人がよい。いい人とかではなく、シンプルに自分の気持ちで生きていて、そこから自然と出る言葉で、ホッとさせられる感じで、変にいい人感だったり、説教感だったりないところがよい。
全体的に影響与える人たちが、影響を与えようではなく、自分の気持ちにシンプルに向きあっているだけで、それを見て何を思うかという感じであり、その点が良かった。
また「マタニティー」では、自分の気持ちを検索ワードにして、検索したらというところが、ドキッとさせられた。知恵袋の回答やコメントなど、正論で断罪してくるものをみて、悩みこむのだが、実際にそうなるだろうなというのと、主人公のように感じたりしても、または全くそういったことに縁がなくても、潰してくるコメントを吐きだすだろうと思ってしまった。
そして、それもまた自分を守るための術ではないかと思わせてくれるのが、この本であると思う。
全て女性が主人公の話であるが、社会を生きていく上で、少なからず感じることが題材なので、考えさせてくれることが多かった。西加奈子さんの他の本も読んでみたいと思う。
- 感想投稿日 : 2020年2月15日
- 読了日 : 2020年2月12日
- 本棚登録日 : 2020年2月2日
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