歴史学の意義やあり方を著した古典名作の新版。装丁が白赤のシンプルだけどスタイリッシュでまずそこが好き。
1961年が初版で幾度と版を重ね読み継がれている。内容は現在読んでも決して色あせないし、愛聴しているコテンラジオにも通ずる信念を感じた。
第一講はこの本のもっとも有名な歴史とは「歴史家とその字事実の間の相互作用」、「現在と過去の間の対話」という主張が語られる。史料フィティシズム、史料の物神崇拝、もう一方の歴史家の解釈主義のどちらに偏るでもない、相互作用的な歴史感というのが肝要である。
第二講は歴史家は独立した存在ではなく、当時の環境や社会情勢、思想に影響を受けるもの、社会的な存在で時代の産物であると論ずる。さらに考察の対象である事象もまた社会的であり、現在‐過去を相互的に知覚され理解されるというスタンスを打ち出す。
続く三-六講とまとめようと思ったけど断念。
歴史における属人的な帰結、偶然の産物を考慮に入れるか?これに対しては、あくまで共通する一般的でメタ的なものを抽出することがより重要である。イギリスや欧米に重きを置く歴史観への疑問を投げかけている部分は、現在より注目度が上がってきている視点だと思いし、この指摘はこの時代には先進的で先見の明あり、鋭いなーと。
全体的にウィットに富んだ堅苦しくない語り口で、翻訳も狙っている部分に(笑)と記載することで、軽妙な感じをばっちり表現されてくる。歴史を学ぶ意義、ただの知識ではなく現在の生活や自分の行動へと結びつくエッセンスを抽象化して築いていくことにあるのだと少し理解が深まったかな。
- 感想投稿日 : 2022年10月15日
- 読了日 : 2022年10月15日
- 本棚登録日 : 2022年9月26日
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