トマス・アクィナス 『神学大全』 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社 (2009年11月11日発売)
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感想 : 8
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トマス・アクィナス初挑戦。スコラ哲学を体系化した人物だ程度の認識でスタートしておりますが、この著作は「神学大全」を各章ごとに読み解いていくといった解説書ではなく、一冊の書物として向かい合いトマスが「神」が試みた知性の探究がどういったものか、それが現代の通観念とどのような化学反応を起こすことができるのだろうか、などを示してくれている著者定義のよる挑戦である。

概して感じたこととしては、現代人が認識論的に普通と思い感じ、考えていることに対して、「神」という第一義的ですべての根源たる存在を信じる・定めることでより高次な領域での思考へと挑んでいるということ。さらに、その「神」の領域は、たとえば世界の創造という観点に関して、何よりも信仰の神秘であって、そこにはわれわれが自らの思考や認識能力のみによってはまったく触れることができない(P92)といったことが顕著だが、人が到達できないものなのだという諦観がある。にも拘らず、純真に信じるに足るものだと一心不乱に信仰する。ここに矛盾が感じられるが、その信仰に迷いなど持つべきではない。

特に感じ入った箇所のおさらい。
第五章「悪」の問題
「悪は善の欠如」であるが、悪い選択に先立った意思の内に欠陥があるが、それは善の欠如であるため悪ではなく、ただの否定である。なので単純に「無い」ですますことのできる「無」であるから、「自由意志」はその作り主である神との関わりから責任があるという推論は拒絶される。

第六章 すべての人が幸福を欲しているか?
現在の価値(善、目的)は人間にとって快いもの、役に立つものというのがスタンダードで意識しがちだが、トマスの価値、幸福というのは知性の究極的探究の最終目的地(神の本質の直視)へと到達することなのだという定義する。うーん、中々達観しているし、人間の知性への単純に信頼感。

あとは、「共通善」にも言及されていますが、こちらも世俗的な欲求を満たすこととは一線を画す思考方法で、中々腹落ちするのが難しい。次はベーシックなトマス・アクィナスの入門書でおさらいするかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教
感想投稿日 : 2022年1月22日
読了日 : 2022年1月22日
本棚登録日 : 2022年1月16日

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