観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書 2443)

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  • 中央公論新社 (2017年7月19日発売)
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教科書の説明からすれば、一行程度の出来事。
しかし、そのなかではめまぐるしく勢力が変わる二年間の大混乱。
やる気スイッチが入るのが遅い尊氏。
燃え尽き症候群と微妙なやる気、保守的な弟・直義。
逆にやる気に満ちた一部の周囲。優勢劣勢で流動化の限りを尽くす各将。
所領や官位を目当てにがんばったのに、それを保証してくれるハズの男は微妙なやる気と現状維持の塊。
そんな不穏な休戦期間に立ち上がるあっちの人やこっちの勢力。
常時殺意と殺気に満ちた南朝。
九州で暴れまわる嫌われっ子(理由不明)・直冬。
突然やる気スイッチの入る尊氏。
叔父とも父親とも仲良くできない義詮。
あまりに当たり前のことだが、歴史は人間によって作られる。
そして、現代社会の「退職理由」第一位は「人間関係」である。
今も昔も人間はあんまり変わらない。
室町時代だろうと、バサラ大名だろうと将軍だろうとそのあたりの面倒臭い人間関係、利害対立は存在していたし、そしてそれが命取りにもなる。
政治的な側面も当然あるが、この面倒過ぎる人々の動きというのもなかなかに面白い。…当人たちは大変だろうが。

あとひとつ面白かったのは、敵方に居た人でもわりと簡単に帰参できていることだろうか。
これが戦国時代なら首を跳ねられて終わり、お家も消し飛びそうだが…やり直しがきくというのは逆に新鮮。
地元にゆかりのある武将も、その許された一人だった。
道理で戦国時代の頭まで続いているわけだ、と思いながらも、地元での紹介では「足利氏に忠誠を尽くし、重んじられた」云々と書かれている。
まあ、直義も足利氏だけどさ…。「忠臣」「幕府の有力者」という印象を与える地元史跡の看板を思い出す。
「尊氏派には反抗したことあるのにね、さらに負けたし…」
となんともいえぬ気持ちになった。
しかし、よく生き抜いた、おらが町の守護大名。



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感想投稿日 : 2023年10月16日
読了日 : 2023年10月16日
本棚登録日 : 2023年5月10日

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