世界が赫(あか)に染まる日に

著者 :
  • 光文社 (2016年1月19日発売)
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頭上では黒一色の夜空に、こまかい星が散っている。まるでうんと濃いコーヒーの表面に、肌理こまかい上砂糖をまぶしたかのようだ。(P.32)
ゆるいカーブを描きながらつづく線路が、夏の陽光を弾いて脂っぽく光っていた。(P.207)
ー親ならね、ほかにもう、どうしようもないの。
…親ならきっとこう思うはずだ。やりかえしたい。わが子をこんな目に遭わせたやつらに、十分の一、百分の一でいいから同じ苦しみを味わわせてやりたい。
ーでもわたしが逮捕されてしまったら、残されたこの子はどうなるのだ?
なにをしても、怒りが、悲しみが消えるわけではない。一私人にできることは限られている。ならば復讐心を噛みころして、いまはわが子のそばについているほかはない。
むろん、苦渋の選択だ。心臓から血が滲むほどに悔しい。苦悶で胸が焼け焦げる。だがそうするよりほかに、どうしようもない。
ーなぜってこの子は、まだ生きているのだから。(P.220)

少年法や復讐心、どこにでもありそうで、なさそうなそんな、お話。彼が生きる希望は何だったのだろう。
私があの状況に置かれていたら、精神的におかしくなって、生きる意味を見いだせないだろう。
悪い奴を罰する、加害者に甘い世界、どうしようもないけれど、これが現実なら、「みんなを殺すか、自分が死ぬか」、この2つの選択になってしまう気がする。今も、加害者がのうのうと生きている世界にいる私たち。どのような立場に立てば良いのか分からなくなった…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年8月3日
読了日 : 2022年8月3日
本棚登録日 : 2022年7月31日

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