中村文則さん3冊目。
3作選ぶなら「妖怪の村」「信者たち」「晩餐は続く」
5作なら「セールス・マン」と「体操座り」
「A」か「B」かだと、どちらかといえば「B」
「妖怪の村」時代、経済、災害、犯罪、信仰…多様に読める現代的な今昔物語だと感じた。相手にとって大事なものだと信じてリスクを抱えて大切にしていたものが、時間を経て相手にとって大事なものじゃなくなっていた、感謝されることもなく呆気なく見放されてしまったという喪失感に注目して読んでみた。
「信者たち」信仰の無純と矛盾。最後の会話の展開で続きが読んでみたいと思った。
「晩餐は続く」聡明な婦人!この類いが好きなわけではないのだけど、癖の強さに贔屓してしまう。
「セールス・マン」憂鬱を交換していく物語。展開が面白い。長編は遠慮したいけど小出しの「セールス・マン」にまたどこかで出会いたい。
「糸杉」解説と解釈が違かったみたいだけど、
ゴッホが熱中し、惹きつけられた糸杉に託された想い。主人公が女の後ろをつける行動とその女のたどり着く場所。主人公が糸杉の絵に惹かれている理由。ゴッホの真相はわからない。けど、それに触れた気がした。
「嘔吐」物語を進行しているようなセミとパトカーのサイレンの描写が気に入っています。
「体操座り」「そーれ〇〇〇〇だー」は読みながらどんびきする人もいるだろうけど、別紙にあった小見出しの方も同時に思い出してしまうポテンシャル高めなセリフだと思っている。
「A」「B」少し攻めている描写もあり、読み取れるところだけ読んだ感想だと「A」の社会的な優劣を連想させられた。私から見たら狂った感覚だと思うけど当時の時代や環境だとその人の感覚も普通なのかもしれない。「B」の感情や同情だけではあらわせない人情。
貧しさやポテロングへの執着、目の下のクマ…Nシリーズ、中村文則さんという人物が何通りにも読める作品集でした。
- 感想投稿日 : 2022年11月16日
- 読了日 : 2022年11月16日
- 本棚登録日 : 2022年9月17日
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