作中、会話の端々に散見される外国と、『思い出す』ことで語られる"昔の"東京。その対比に物理的且つ時間的な距離を感じてしまう。
街のことを考えている。街の上には営みがあり移ろう季節があり、過した歴史がある。むかし戦争で焼けた一軒の家で交わされた家族の会話は確かめようがないが、今俺が住んでるアパートの、向かいの家の庭で花をつけた植物の名前も知らない。知りようのない家族の会話と、俺の知らない植物の名前と言うのが俺が、ではなく君が、と言い替えることは恐れがある。ただその恐れすら乗り越えられるような気がする。
これらを担保するのは安いロマンチシズムではなく、確かな実存をそこに見出す事ができるからではないかとそんな事を考えている。
って俺が言うのが東京。君がいるのがフランス。昔俺が京都で作った歌の中には「フランスってのは一体どこにあるんでしょうね」から始まるのがあって、すごくそれを思い出した。
そんな小説ではないけれど。
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- 感想投稿日 : 2022年12月19日
- 読了日 : 2022年12月19日
- 本棚登録日 : 2022年12月19日
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