(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2013年6月28日発売)
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感想 : 173
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『アメリカから自由が消える』はつまらないとか言って、なら読まなきゃいいじゃん!って話なのだがw、そうは言っても一緒に買っちゃったもんでー(笑)

読み終わっての感想…、というより、読んですぐ思った。「この人はつくづく合わないんだなー」とw
いや、この『貧困大国アメリカ』のこの3冊目の頭に“㈱”をつけたセンスなんかスゴイと思うの。
現在のアメリカ(というより世界)が抱える問題の根源を一文字で表せているから。
『ルポ トランプ王国』を読んでいて、そういえば、「今のアメリカの貧困について書いた新書があったな」とアマゾンで見た時、その“㈱”を見た瞬間、「これ買う!」って思ったくらいだもん。

なのに、読みだすと、なぁ~んかイヤになってきちゃうのがこの著者の本の特徴なんだなぁー。
1つは、ある問題点を追及する中で、途中からその問題点にからむ別の要素の問題も含めちゃうことで、論点に微妙なズレが生じさせちゃう論理展開のクセにあるんだと思う。
主題は『㈱貧困大陸アメリカ』なのだから、種子ビジネス(企業)が貧困を生み出しているというのはいい視点だと思う。
その種子ビジネスによってつくられた農産品の安全性を確認することが出来ないという問題があり、さらには、種子ビジネス企業による農家への強制が連作障害と農薬耐性害虫と生み出している問題があるということ、それもわかる。
でも、そっちの問題点を『㈱貧困大陸アメリカ』の中で延々語るのは、ちょっと趣旨が違うように感じる。
だって、主題は『㈱貧困大陸アメリカ』なのだ。
著者が言いたのは、種子ビジネス企業がその企業からGM種子と農薬をずっと買わなきゃならなくしてしまうため、農家は貧困に陥っていく現状がある。それは、連作障害と農薬耐性害虫が発生するため、年々収穫量が落ちていくのにもかかわらず、企業から種と農薬を買い続けなければならないからだ。
だから、種子ビジネス企業はよくない。貧困を生み出す原因になっている、だと思うのだ。
なのに、種子ビジネス企業によるGM種子(遺伝子組み換え種子/作物)は安全性を確認することが現状では出来ない。さらに連作障害と農薬耐性害虫を生み出している。だから、種子ビジネス企業はよくない、という風に読めちゃう展開では著者の論点から外れてしまうと思うのだ。

それは前に読んだ『アメリカから自由が消える』でも同じで。
ミリ波スキャナーによるプライバシーの侵害を語るのに、健康被害や同性カップルの体にシリコンが入っているのがわかったことで別れ話に発展した等々、外堀を埋めるようなエピソードを延々語りだしちゃうので、読んでいてウンザリしてくるのだw

もう一つ、著者のわるいところは、文中に出てくる「」付の会話!
著者としては、インタビューした時の再現のつもりなのか、もしくは(著者の)合いの手をいれることでわかりやすくしているつもりなのか、その意図はわからないのだけれど。
でも、読んでいる方からすると、その「」付の会話の文章を読んでいると、アルバイトライターがテキトーに書いたネット記事を彷彿させるというか、週刊誌の記事広告をつい読んじゃった後のあのなんとも言えない損した感を思い出すというか…w

インタビューの再現なら再現でいい。専門家の説明をわかりやすくするためならそれでもいい。
でも、なら、もっとそんな陳腐じゃなく書いてくれよ!
これじゃまるでインタビューされている相手は、著者が言わせたいようにしゃべってるみたいじゃん!
と、思わず叫び出したくなっちゃうのよ、もぉ~(笑)

ていうかさ、P165の写真のコメント。
“EU・インドFTAに反対する子供たち”って、どう見たって小学校上がる前くらいの子供、FTAなんてわかるわけないじゃん。
正しくは、“EU・インドFTA反対運動に参加した親に連れられている子供たち”だろ! ←ほとんど重箱の隅つつき(爆)

前にも書いたけど、この本のタイトルに“㈱”とつけた、世の中の観察眼はスゴイと思うのだ。
それは、(いい意味で)社会を斜めに見ているからで、それはたぶんジャーナリストとしての大事な資質なんだろう。
それを見ても、この本で描かれていること一つ一つは本当のことなんだと思う。
いろいろイチャモンをつけたけど、語られている問題点の一つ一つは、今までニュース等を見ていて漠然と想像していたことを具体的にさせてくれる。それは、とっても興味深いし、またいろいろ考えさせられる。
でもさ、この著者ってさ、ちょっとクソ真面目すぎるんだよね(笑)
これは『アメリカから自由が消える』でも書いたことだけど、そのクソ真面目さが朝日新聞(あるいは戦後の進歩的文化人と称する連中)を彷彿させて、やたらと反発したくなってきちゃうのよ(爆)
ていうか、(この本で書かれている一つ一つの要素を疑う気はないが)著者のインタビューの内容を自分の都合のいいようにつぎはぎして構成し直して語るやり方は、NHKお得意の、取材した内容を何でもかんでもNHK色に染め変えずにはいられない、あのやり方みたいで無性に嫌だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年6月8日
読了日 : 2019年6月6日
本棚登録日 : 2019年6月8日

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