敵影

著者 :
  • 新潮社 (2007年7月1日発売)
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本棚登録 : 81
感想 : 16
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実際の収容所がどうだったか分からないし、その記録に触れる機会もなかった。沖縄戦の末期を描いた何本かの映画でその一部を知っただけだ。この小説に描かれたその時の様子は確かに映画「沖縄決戦」の病院壕のそれと似ている。敗軍の将兵の闘いも悲惨だが、傷病兵はもっと悲惨だ。他国と陸続きで、歴史上何度も戦争をして、負けたり勝ったりしている国々は、負け方も心得ている気がする。負けは国家の終わりじゃなく、戦争の終わりを意味するだけのこと。負けたら復興すればよい。そして復興のために人は生き残らなければならない。残念ながら戦争に於いても日本は長い鎖国状態で、戦い方も負け方も知らなかったようだ。先の戦争で、手痛い負けを学んだ日本は、次の戦争ではもっと上手く勝ったり負けたりしなければならない。もちろん戦争はしない方がよい。しかし喧嘩は片方の意志だけで始めることができるものだ。ならばもっと上手く闘わねばならない。現行憲法では、国家間の紛争を解決する手段として放棄しているが、放棄ではなく選択してはならない手段として残すべきだ。そして、戦争をもっと学び、被害や犠牲を最小限に止めて終わらせる方法を身につけるべきだと思う。戦争をしたくないなら、戦争によって苦しむ人を増やしたくないなら、悲惨な状況を広げたくないなら、戦争を嫌悪するならばこそ戦争から目を背けずしっかりと学ぶべきだ。この小説を読んでそんなことを思いました。ただ…。面白かったけど、ちょっと感傷的に流れすぎているような気がしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・戯曲・エッセイ(国内)
感想投稿日 : 2008年1月16日
読了日 : 2008年1月16日
本棚登録日 : 2008年1月16日

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