感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2018年1月25日発売)
3.87
  • (50)
  • (103)
  • (61)
  • (7)
  • (1)
本棚登録 : 1744
感想 : 125
3

感染症の世界史をわかりやすく。ジャーナリストがまとめてみた

●本の概要・感想
 環境ジャーナリストの石井氏が感染症の歴史をまとめて紹介する本。「感染症の世界史」というタイトルだが、著者は感染症や感染症史の専門家ではないことに注意。本書では感染症史の大きな流れやストーリーを抽象化するような話はほとんど含まれていない。あくまで、ジャーナリストによって分かりやすく編纂された感染症の歴史である。ピンポイントで事実を抑えたい人にお勧めする。感染症史だけでなく、そもそもの感染症の原因であるウイルスの特性や発生源についても学べる。

●本の面白かった点、学びになった点
*なぜウイルスは宿主を殺してしまうのか?
 感染症を引き起こすウイルスは免疫との戦いの果てに、宿主を殺してしまうことがある。免疫にウイルスが目をつけられれば、「どちらかが死ぬ」まで戦いが終わることはない。免疫がウイルスを殺す過程で人間を傷つけることもあれば、ウイルスによる作用で人類が傷つくこともある。感染症によって人が死ぬのは「ウイルスが人の免疫メカニズムに勝利」した証拠なのである。となると、ウイルスの運命も数奇なものだ。自分たちの勝利が決まった瞬間に、居住環境は壊れてゆき、やがて宿主からは何の栄養も奪えなくなる。免疫に勝っても負けても、いつかはウイルスは死ぬことになる..。

*ウイルスを取り込んで動物は進化する
 ウイルスは常に悪者というわけではない。生物が進化する手助けをすることもある。>>「生物は、感染したウイルスの遺伝子を自らの遺伝子に取り込んで、突然変異を起こして、遺伝情報を多様にし、進化を促進してきた。人も含めて、どんな生物にもウイルスに由来する遺伝子が入り込んでいる。」

*都市開発によって未知のウイルスが人間社会に入り込みやすくなった
 新しい感染症は、動物にもともと潜んでいたウイルスが人に侵入できるように進化してもたらされることが多い。野生動物との接触がより身近になった現代社会では、未知のウイルスがより入りこみやすくなったといえる。コウモリやサルが暮らすジャングルを開発し、人と野生動物の距離が近くなったため、感染症をもたらすウイルスが人に入り込みやすくなった。
 加えて、かつてないほど人間が世界各地を行き来する「移動文化」の発展が、感染症をより広めやすくもしている。

*都市社会が感染症に弱い2つの理由
1. 人が多く、過密
2. 様々な地域から人々が往来する

*家畜を飼っていると花粉症やぜんそくにかかりにくなる

*14世紀に流行ったペストは少なくとも三、四十年は流行しつづけ、ヨーロッパの人口の3分の1に相当する二千五百万人から三千万人が死亡した。それによって森林面積は上昇。二酸化炭素の排出量が減った

*日本でのペスト拡大も収束までに27年かかっている。ペストが最初に日本に侵入したのは1899年で、収束発表があったのは1926年となる。実に27年間かかったものの、ペスト被害国のなかでは上手に収めた方である。日本だけで2215人の死者があったが...

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年4月19日
読了日 : 2020年4月19日
本棚登録日 : 2020年3月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする