コンビニ人間

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  • 文藝春秋 (2016年7月27日発売)
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芥川賞受賞作品。
幼少期から「普通」な生活が送れずにいた女性、古倉恵子がコンビニバイトを通じて、他の店員の「普通」を真似をしつつ生活を送るようになる。そしてバイトを続けて18年。38歳コンビニのアルバイト店員となった古倉の前に、新しいバイトとして白羽という男がやってきて……という話。

皆が暗黙の了解のように承認している「普通」にうまく乗れた人、乗れずに「普通」に不快感を示す人、「普通」を理解できない人。
主人公の古倉恵子は「普通」を理解できない人に該当する。「コンビニ」という画一化、マニュアル化された仕事に自分を最適化させていくことで「普通」の皮を獲得している。

個人的には、「普通」でない古倉の生き方に対して余計な口出しを、白羽や古倉の地元の友だちの夫たちなどは男からの立場で、古倉のバイト先の女性同僚や地元の友人は女の立場から、それぞれあれこれと口出してしているのが印象的に残った。
皆、「普通」側にいる人間として生きて、もしくは生きたいと思っており、「普通」ではない古倉をあちら側の人間として違和感を感じざるを得ないのだ。

今の自分の状況に引き寄せて読むと、病気とはいえ仕事を休んで働けていない30歳を超えた今の自分は「普通側」にいるのか「普通でない側」なのかと考えてしまうし、そもそも「普通であることを望んでいるのか、その望みは自分がつくった望んでいることなのか?」とも考えてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年9月21日
読了日 : 2021年9月21日
本棚登録日 : 2021年9月17日

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