ヘーゲルの法哲学から始まってドイツ財政学の三巨星の一人、ローレンツ・フォン・シュタインについての記述は最も興味深かった。カール・マルクスとほぼ同世代であり、同じくヘーゲルから深い影響を受け、かつフランスでの社会主義・共産主義思想との出合いによって衝撃を受けたところまでは、後進ドイツ知識人が辿った、ある意味で典型的な道行きだったとも思える。この本で初めて知ったことだが、シュタインは社会主義・共産主義をイデオロギー的に断罪することなく、「ドイツ人としては稀にみる高い水準」での理解を示し、ヘーゲルから継承した有機体的国家の役割として、「社会改良」を位置づけたとのことだ。
言うまでもなく、ローレンツ・フォン・シュタインは伊藤博文が直接教えを請い、その国家観は明治憲法として結実化された。目の当たりにした先進資本主義国の階級間格差・階級対立に対する、後進日本的解決として提示された大日本帝国憲法。表向きには「天皇主権」を謳い、実は権力の中枢では通説としての「天皇機関」説を秘めていた。
後にその秘密を読み破り、若き北一輝は『国体論および純正社会主義』を書いた。
本書の主題である財政学の根幹をなす税金からは、話が大いにそれてしまった。けれどもこんな妄想を決して手放すことなく、国家とは何かを考えながら、本書を読み進めていきたい。
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- 感想投稿日 : 2020年7月23日
- 読了日 : 2020年8月9日
- 本棚登録日 : 2020年5月25日
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