『眠れる美女』の、秋から冬になっていく感じが好き。こういうところに作者らしさを感じ惹かれる。
娘たちが生きたまま人形にされてしまったようで怖い。娘たちの肉体は江口老人の追憶や想像と結びつくことでいっそう生々しさを与えられる。
『片腕』は薄気味悪く、でも絵面はなかなかコミカルだなんて思う。ひたひたとにじり寄る紫のもやが不吉だがたまらなく幻想的。
『散りぬるを』は、創作過程の頭の中を垣間見みるような面白さがある。小説家ゆえの明晰さはまさに狂気。
三作とも寂しさが強く後を引く。夢とうつつの境は魅惑的でありまた無情だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学 日本
- 感想投稿日 : 2020年9月3日
- 読了日 : 2020年9月2日
- 本棚登録日 : 2020年9月2日
みんなの感想をみる