終わり続ける世界のなかで

著者 :
  • 新潮社 (2011年11月22日発売)
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本棚登録 : 92
感想 : 20
4

読み終わって、タイトルの秀逸さに唸った。
ほぼラストまで読んでるのが苦痛で、主人公伊吹の周りからの影響のされやすさと、視野の狭さというか、固執した思想とか…伊吹にモヤモヤしっぱなしだった。
でも彼女は彼女なりに考えていて、影響を受けながら少しずつ前に向って歩いている、三歩進んで二歩下がるみたいな速度だなぁと思ったけど。
最後まで伊吹と関わることのなかった東堂さん。その東堂さんの言葉にたくさん影響されていて、直接合わなくても影響を与えられる人物。何者。

人生に絶望したり、生きる意味を考えたりするけれど、ラストの篠田さんからの手紙「みんなは一人、一人はみんな」の言葉は、ああそうなのかもしれないなぁと思った。
今の私が形成されまるまで、巡り合った人、出会った書物、聴いた音楽や言葉、それらに少しずつ影響されながら「私」が形成されていて、それらが組み合わされているんなら、私はあなた、あなたは私、たくさん連なって一人はみんなでみんなはひとりなんだなぁ。海につかってるような……。

伊吹がみた海と夕日の景色のような、心地よい終わり方でした。今までのもやもやが吹き飛ぶような……晴れ晴れとしました。
友達がいないと嘆いているけど、かけがえのない友がいたね、と伊吹の肩を叩きたくなった。顔を上げればみえるものがあるよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 図書館
感想投稿日 : 2023年2月1日
読了日 : 2023年2月1日
本棚登録日 : 2023年2月1日

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