社会に出た若者の、生きにくい、息苦しい焦燥感を、淡々と描く。
暑苦しくもがかず、しずかに淡々としながら、心の底には深い悲しみと、自分自身を信じられないながら信じたいという揺れ動く気持ちが垣間見れる。
その淡々とした表現に、実際に世の中とのギャップを感じている同世代はかなり惹きこまれるのだろう。
インタビューでもいっていたように、いにおさんは読者がどういうものに惹きつけられるかきちんと計算して描いているというのがよく分かる。セリフが男性脳的、論理的。
また、このソラニンの雰囲気は、彼自身のキャラ(『漫画みたいな恋ください』鳥飼茜 で描かれている)に似ている気がする。
何事にも冷静でいるように外からは見えて、マイペース。
でも、中はマグマのようにぐつぐつ創作に燃えている。
シチュエーション的には、『南瓜とマヨネーズ』魚喃キリコ に似ている。
『南瓜とマヨネーズ』はダメな男女感のだらしなさ、人間のどうしようもなさがエモーショナルに表現されていて、その人間の業のようなものに惹かれた。
それを、いにおさんはいったん冷静なムードで包む(登場人物たちのすずしげな眼)。
このまなざし(登場人物たちの社会との距離の取り方)に共感できるか否かでこの作品に入り込めるかが分かれるのではないか。
わたしはおじさんになってしまったのか、このまなざしになんとなく惹きこまれなかった。
『南瓜とマヨネーズ』は「人間って動物なんだよね。」というような、ロジカルではどうにもコントロールできない感情が生々しく、惹かれるのだなと。
- 感想投稿日 : 2021年1月31日
- 読了日 : 2021年1月31日
- 本棚登録日 : 2021年1月26日
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