本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書 235)

著者 :
  • 筑摩書房 (2015年6月8日発売)
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本棚登録 : 753
感想 : 67
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沖縄で古本屋を一人で営んでいる女性のそのお店にまつわる本。

沖縄の商店街の古本屋が閉店するのを聞き、新刊書店に勤めていた筆者が会社を辞め、その古本屋を引き継ぐ。

客観的に聞くと、筆者は決断力、行動力も非常にあるように見えるが、この本からは、淡々と、自分がやりたいことに素直に実直に従っていたら、このような結果となったというようなニュアンスで。この安定感のあるスタンスが、芯が感じられ安心できる。
これは本屋さんのスタンスとしても同様なのだろう、色々な古本屋仲間が助けてくれているようだ。

また、商店街の中の小さな古本屋なのにもかかわらず、自分の生活を成り立たせている利益をあげている。これは商店街という立地(観光客がたくさん来る)と、沖縄ならではの沖縄本の収集(強み、ニッチ産業的なアプローチ)が合致して、ここでしか買えない沖縄本を観光客が買えるというところにあるのでしょう。

また、本文内にあるように本を売ってくれる70代世代の沖縄の方々との交流もあるように、地元の人との交流も確かにあることが大きい。

出版不況、電子書店の台頭という中で、新刊販売のリアル書店(特に小さい書店)は苦境に立たされている。
自ら本を買い取り、自分で値付けして売る、売れなくても本は返品できない、いつでも自分が売りたい本が揃えられる訳ではない、と一見新刊書店と比べると不利な古本屋も、その本屋なりの特色を出すということは、新刊書店よりも勝った部分である。

大きく状況が変わり、苦境にたっているからこそ、その生き残りの戦略の中に新しい価値がうまれるのだと思った。

この作者は自分の実施いしてることをビジネス本のように高らかに講釈するのではなく、自分のやっていることを実直に報告している形式なので、非常に読みやすい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年12月2日
読了日 : 2017年12月2日
本棚登録日 : 2017年10月19日

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