朱色の研究

著者 :
  • KADOKAWA (1997年11月1日発売)
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本棚登録 : 484
感想 : 42
5

続きが気になって、とかハラハラの連続で、とかいう理由で一気に読んでしまう本はいくらでもあるけど、これは夕焼けの魔力に引き込まれるかのようにスーッと読めてしまった。余韻に浸っている私の瞼の裏には痛いくらいの朱色。最初毒々しかったその空は、最後には優しい郷愁の色へと変化して朱美の心を少しづつ癒してくれているようだった。

幽霊マンションでの違和感の正体に、気付けたはずなのに気付けなかった。806号室と906号室の入れ替えトリックは嫌に手が混んでいるのに、ベッタベッタと出てくる指紋を片付けない爪の甘さが不快で仕方なかった。アリスは六人部が自分と似ているところがあると言ったけど、同意し兼ねる。自己承認欲求が高い、見守ることで朱美の苦しみを自分も理解した気になっている浅はかな男、そんな印象しかない。

火村先生が悪夢から解放される時は来るのだろうか。
その夢から解き放たれた時こそ、火村先生が向こう側に行ってしまうのではないかと、怖くなる。
無神論者にとっての火村先生の救いは、一体何なのだろう。いつか先生がアリスに救いを求める日が来ることを願ってやまない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2020年2月21日
読了日 : 2020年2月20日
本棚登録日 : 2020年2月20日

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