小説ヤマト運輸 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2013年7月27日発売)
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小説ヤマト運輸 (新潮文庫) 文庫 – 2013/7/27

小倉昌男氏がいなければ今日のヤマト運輸は無い
2015年1月4日記述

高杉良さんによる小説。
1995年9月に徳間書店より単行本として出版。
1997年12月に徳間文庫。
2000年3月に講談社文庫。
いずれも「挑戦つきることなし」という題名で刊行されている。

2013年に出たこの新潮文庫版では小説ヤマト運輸となっている。
副題となっていたものではあるけれどもこちらの方がわかりやすいだろう。

本書はヤマト運輸創業者の小倉康臣(1889年11月29日 - 1979年1月15日)と
息子で2代目社長の小倉昌男(1924年12月13日 - 2005年6月30日)を中心に据えて
ヤマト運輸の歴史を描いている。
ヤマト運輸、ヤマトグループに勤める方は会社、グループの歴史の勉強になって良いと思う。
50年史、70年史等より読みやすいだろう。
クロネコマーク誕生秘話など興味ふかい。

小倉康臣も良い経営者だった。
しかし2代目社長の小倉昌男がそれ以上の器の人物で
あったが故にヤマト運輸は大きく成長したと感じた。

特に脳梗塞の後遺症があったにも関わらず社長を続けていた父、小倉康臣に社長を辞めてもらったという箇所には驚いた。
創業者社長を辞めさせるという話は聞いたことも無い。
例えればユニクロの柳井正氏を社長を辞めさせるようなものだが想像出来るだろうか?

大口便から撤退し宅急便創設。
岡本茂社長の下の三越との取引停止。
郵政省との信書事件。
運輸省との闘い。
クール便開発へのこだわり(冷凍温度)

全てが納得いくというものだ。
そして経営哲学として常に消費者視点であったことも見逃せない。

著者である高杉良氏も指摘しているのだが

「会社で情報をいちばん多く持っているのは誰かと言えば、決して社長ではない。
なぜなら、悪い情報は絶対社長のもとにあげられてこないからだ。悪い情報は、えてして労働組合に集まる。だから私は、労働組合に『きみたちは私の大事な
神経だ。会社が病気になったとき痛みを伝えてくれるのがきみたちだ。だから会社がうまくいってなかったら必ず伝えてくれ』というようになった」

上記の小倉昌男氏の指摘は極めて重要である。
バッドニュースが上に上がりにくい現実を良く知っていたことも会社運営のプラスになったに違い無い。
これは4年7ヶ月に及ぶ結核からの回復。
(康臣のGETしたストレプトマイシンのおかげでもある)
静岡運輸への出向時代の会社再建の苦闘・・
大きな試練と挫折を経たことも小倉昌男を大きな経営者として育てたのだと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年12月23日
読了日 : 2021年12月23日
本棚登録日 : 2021年12月23日

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