「ひきこもり」を肯定的にとらえる本。字が大きくて気軽に読めるのも良い。ただ社会問題や精神病理としての引きこもりの解像度は低めで、孤独の価値を問い直すような内容だった。世の中の流れから少し身を離してみるとこんな感じの考え方になるだろうか。
印象的だったのは、「ひきこもっている人とは何もしていない人ではなく、熟考し、自己との対話を繰り返すことで価値を増やしている人」という視点。言われてみればなるほどなと感心した。
確かに、始終「繋がって」いればネット情報をコピペしたような頭の中になるしかないし、そんな人の話す言葉はうすっぺらで聞いていてもあまり面白くない。情報をただ右から左に運んでいるだけでは独自の考えや価値観などが見えないからだ。そういう価値ある物は孤独から生まれると言う。他人の書いたススメスポットやお買い得情報のままに右往左往する人たちは健全にひきこもれなくなった人たちでもあるのだと読みながら思った。
あと、どんな形であれ自分の考えを表に出すのは大切だという話も響いた。確かに、どんなにひきこもっていても人は社会の一部であり、自分が思うことは他の誰かが思うことでもある。だから文筆家でなくても各人の思いには価値がある。時にアウトサイダー的な人の言葉が社会を動かすのは健全な孤独でもって深い視点で社会を見ているから。その意味では引きこもりには存在価値がある。
もちろん実際の「引きこもり」当事者には終始ネットに接続されている人も多いし、病的な孤独は心身への悪影響が著しいため、引きこもり支援者への批判などには多少的外れの感じはあったが得る所はある本だった。
- 感想投稿日 : 2024年1月14日
- 読了日 : 2024年1月11日
- 本棚登録日 : 2024年1月11日
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