アイスマン (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房 (2002年2月1日発売)
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本棚登録 : 33
感想 : 3
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母のすねかじりでずっとやってきた主人公だが、母は死んでしまった。死んでいることを隠し、小切手をもらい続けるが金に換える時の署名が偽造できない。主人公は家の反対側にある屋台の花火売りに、仲間と強盗に入ることにする。が、それもあえなく失敗。ボロボロになりながら行き着いたのは、フリークス・サーカスの一団だった。

ヌママムシやらオポッサム、ワニなんてのが登場する→『HOOT』
例えが下品すぎて面白い。月の描写なんかは、「油で汚れたディナー皿を下界に落としてしまったかのよう」だって。話は、これは他の物語に比べても秀でてしみったれた話で、サーカスに入った主人公は、一団とだんだん打ち解けていく。ドッグマンを親友だと感じるようになった。だけど、うまくいきかけていたところで、ドッグマンの言うところの「裂け目/クレバス」団長の妻にはまりこんでしまう。人間を堕落させたイヴになぞらえるシーンもある。肉体的なつながりをもつことになり、女の殺人計画を拒むことができず、実行犯になる。団長を殺すつもりが、間違ってドッグマンを殺すことになってしまう。そして最後の計画で、団長とともに自分も死ぬことになる。
女は遺産と主人公の小切手をもらい、作中何回も出てきた不気味なアイスマンを解体する。たぶんアイスマンというのは、不気味だとか馬鹿馬鹿しく思いながらも、それをちょっとは信じてしまう人間性というか、夢みたいなものを現していたと思う。団長が「このアイスマンは実はキリストの遺骸なんだ」という話をしたから、なおさらそれは強くなった。だけど結局ただの木くずになってしまった。哀しすぎる話だ。ボトムズの方が、まとまりがよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ■外国ミステリ
感想投稿日 : 2012年11月22日
読了日 : 2003年8月21日
本棚登録日 : 2011年10月6日

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