職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎 (2012年5月30日発売)
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中村淳彦さんの『職業としてのAV女優』を読みました。 AV業界全般の変遷や仕組みについて書いたノンフィクションです。
中村淳彦さんは、社会の暗い部分にスポットを当てたノンフィクションの本を多く書いています。

幻冬舎のWebサイトで『中年童貞』にインタビューするコラムなども担当されていて、中年童貞になるにあたっての背景などを訊いています。そこには過去のいじめなど社会的な問題が見え隠れしていて、とても考えられます。

○AV女優が一般的な存在になってきている
この本を読んで驚いたのは、かつて裏社会的でタブーだったようなAV女優が一般的な職業になってきているということです。それにはいくつの理由があるそうです。

○環境整備が進んで業界が健全化してきたこと
AV業界は合法と違法の間に位置するパチンコ業界のようなもの。数々の摘発や裁判を経て危険な経営を行う企業は淘汰されていったため、業界全体が安全路線へ移行しているそう。また、安心して仕事ができるように性病や衛生面に関する環境整備が進んだことで、『危険な業界』というイメージから『安全な業界』へとイメージが変化しているそうです。

○価値観の変化からAV女優=恥ずかしい仕事と思わない人が増え始めた
かつてはスカウトが中心で、自ら足を踏み入れる人の少なかったこの業界も現在では、アイドルになるのと同じ感覚で自ら足を踏み入れる人も増えたそうです。また、親や家族に自分の仕事のことを躊躇せずにオープンにしている女優も多いんだとか。

○懸念
AV業界の環境整備が進んでいることはとても良いことだと思うのですが、リスクももちろんあります。 イメージが変わったとはいえ、自分の裸が映像として残り続けることは揺るぎない事実。しかもデジタル全盛の現代では、1つの作品がバンバンコピーされてどんどん拡散していきます。また、AV女優のイメージが変わることで新たな問題も・・

○AV女優がなくなったことで、女性のセーフティーネットが1つ減った。
かつてAV女優は、社会のセーフティーネットとして機能している側面があったそうです。 大衆に裸を晒すことになるAVの仕事は、多くの人がやりたがらないから、賃金が高くて、誰にでも望めがチャンスのある仕事でした。
ところが、AV女優を自ら志望する一般女性がとても増えたことで、結果的にAV女優は、容姿端麗、水商売経験無しなど高いレベルを求められるようになっていきました。貧困層や他の職業を継続することが困難な、精神的に不安定な女性が働けない状態になってきているのです。
セーフティーネットとして健全ではないかもしれないけど、ホームレスを脱却するため、AV女優を志すも、需要がなく売春を続けている女性の事例などもあるそうです。

○新たな展開
驚きなのが社会のセーフティネットとして、AV女優を斡旋するNPO団体などが現れる動きもあるんだとか。色んなことを考える人がいますね。 一見ぶっ飛んでいますが、良い側面もあるそうな。深くは知らないので僕はなんとも言えません。
近年インターネットの登場などにより業界全般がどんどん変貌しています。AVなど性風俗の世界にも例外なく様々な変化がおきています。 今後の日本は、人の暮らしはどのように変わっていくのでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション・ルポ・エッセイ
感想投稿日 : 2015年2月3日
読了日 : 2014年11月16日
本棚登録日 : 2014年11月16日

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