創世記(旧約聖書) (岩波文庫 青 801-1)

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  • 岩波書店 (1967年8月16日発売)
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神々は大洪水を起こすことを決めた。人間には内緒。しかし知恵の神エアが、人間ウトナピシュティムに船を作らせて生命の種を救わせた。神々に選ばれたウトナピシュティムは不死を与えられ、楽園ディルムンに住むことを許された。▼ウルク王ギルガメッシュ。友人エンキドゥの死を経験し、死の恐怖を抱く。不死を求めて旅立つ。楽園ディルムンに辿り着いたギルガメッシュ。「自分も不死にしてください」。しかし、ウトナピシュティムが出した「7日間寝てはならない」という課題がクリアできず不死にはなれなかった。『ギルガメッシュ叙事詩』BC1200年 シュメール

神は天や地を生み出した。地理の記述は中近東のみ。▼神は土の塵から自分をかたどって人を創造した(1:27)。人よ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地上を這う生き物を支配せよ(1:28)。▼アダム(ヘブライ語で土)とエバ。狡猾なヘビにそそのかされ、知恵の実を食べて神怒る。アダムは労働の苦しみを、エバには出産の苦しみを与えられる。エデンの園から追放される(2:9)。▼追放後アダムとエバはカイン(農耕)とアベル(遊牧)の兄弟をもうける。しかし兄カインが弟アベルを殺害。兄カインは放浪の罰を受ける。アダムとエバはその後、新たな息子セトをもうける。セトの子孫がノア。▼人間たち堕落。神怒って大洪水。一番高い山(アララト山)も水に浸かる。人類は絶滅。ノアだけは事前に箱舟を作れと命じられ、助けてもらう。神「わたしを崇めるなら、二度と洪水は起こさない。あの虹が約束のしるしだ」。ノアの息子たち、セム(中東)、ハム(北アフリカ)、ヤペテ(欧)。※その他の民族のことは書かれていない。▼昔々、世界中の人間は同じ言語を話していた。人間、天まで届く塔(バベルの塔)を作ろうとし、神怒る。言語をばらばらにされる。▼ノアの息子セムの子孫アブラハム(ユダヤ人の祖)、一族(父テラ・甥ロト・妻サラ)を連れてウルからハランに移住。神「私が示す地へ行け」。カナンに到着。ある日、90歳の妻サラが息子イサクを生む。アブラハム、息子イサクを溺愛。神「アブラハムよ、イサクを殺せ、神に捧げよ」。アブラハム、息子イサクをモリア山へ連れて行き、殺そうとする。と、その瞬間、神の使い「止めなさい。お前の信心はよく分かった」。息子の命は神から頂いたもの。その命をどうするかも神次第。人間は神に従うのみ。神「セムの子孫、アブラハムよ、カナン(パレスチナ)の土地を、お前とその子孫に与えてやる。だから、わたしを敬え、崇めよ」▼ 神、堕落したソドムとゴモラの人々を町ごと炎と硫黄で皆殺しにする。神の命令に従わないから。ソドムに住んでいたロトは天使から後ろを振り返らないで逃げなさいと命じられるが、ロトの妻が振り返ってしまい塩の柱になる。『創世記』

イサクの息子ヤコブの時代、飢饉が起きたので一族を連れてエジプトに移住。当時、エジプトはヒクソス族が支配しており、ヒクソス族の近縁イスラエル民族もエジプトに移住。しかし、エジプト人はヒクソス族をエジプトから追い出し、イスラエル民族は奴隷に。過酷な強制労働はもう嫌だということで、ヤコブの子孫モーセがイスラエル民族を連れてエジプトを脱出。シナイ山へ。預言者モーセを通じて、神は言った。以下の契約(十戒)をまもれ。他の神はない(最重要ルール)。神を敬え(像を造るな、神の名をみだりに唱えるな、安息日は休め※エジプトでの奴隷労働の記憶)。道徳まもれ(父母を敬え、殺すな、不倫すな、盗むな、嘘つくな、隣の家をほしいと思うな)。『出エジプト記』

年に1回、山羊(ヤギ、goat)を荒野に放つ。ユダヤ人の身代わりに罪のつぐないをさせる。scapegoat『レビ記』

神はアブラハムとその子孫にカナンの地を与えると約束された。アブラハムの子孫モーセの死後、モーセの従者ヌンの子ヨシュアがモーセの後継者となり、カナンの地(約束の地)に向けて出発した。カナンの地の都市イェリコ(ヨルダン川西岸)には先住民族がいたが、皆殺しにした。「町にあるものは、男も、女も、若い者も、老いた者も、また牛、羊、ろばをも、ことごとくつるぎにかけてほろぼした」。神の命令に従い、アイの住民も同じく、皆殺しにした。ヨシュアの名声はあまねくその地に広がった。『ヨシュア記』

ヘブライ人は、ペリシテ人(体格が大きく鉄製の武器をもつ)の軍に苦しめられていた。そこに現れた怪力サムソン(ヘブライ人)。サムソンはペリシテ人の軍を圧倒した。ヘブライ人側が優勢に。そこで、ペリシテ人の美女デリラは、サムソンを誘惑して弱点(髪の毛を切ると怪力が出ない)を聞き出し、サムソンの髪を切って怪力を奪う。捕らえたサムソンは両目をつぶされ、ペリシテ人の神殿に連れていかれる。しかし、サムソンが神に祈ると、髪の毛が伸び、怪力が復活。サムソンはペリシテ人の神殿を破壊した。『士師記』

ヤコブの子孫ダビデはペリシテの巨人戦士ゴリアテの眉間に石を当てて倒す。▼ダビデ王はある美女に一目ぼれ。兵士ウリヤの妻という。ダビデ王は人妻と知りつつも、美女を愛人にして妊娠させる。ダビデ王は、兵士ウリヤに手紙を持たせて戦場へ送り出す。この手紙を現地の将に渡せ。中は見るな。「ウリヤを敵の精鋭の中に孤立させ討ち死にさせよ」。ウリヤは死ぬ。『サムエル記』

イスラエル王国、ダビデの子ソロモンは他の神を拝むようになった。重大な契約違反。イスラエル王国は南北に分裂して衰退。南のユダ国の民はバビロニアの奴隷に(ユダヤの敵・新バビロニアのネブカドネザル2)。これは神によるイスラエル民族への罰。『列王記』

財産と妻子を失い人生どん底のヨブ。神は人々に幸福とともに、苦難も与える。悪いことをしていなくても。どんなに不幸でも神を信じて生きなさい。『ヨブ記』
※海獣リヴァイアサン

ペルシアで暮らすユダヤ人の美女エステル。ペルシア王に気に入られ、王妃になる。ユダヤ人であることは内緒。ペルシア王の大臣ハマンはユダヤ人が大嫌いで、ユダヤ人を皆殺しにするよう王に迫る。そこで、ユダヤ人エステルは、王と大臣を宴会に招待。上機嫌の王「エステルよ、お前の望みを何でもかなえてやろう」。エステル「ユダヤの敵ハマンを死刑にしてください」。ハマンは死刑になる。『エステル記』

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※旧約聖書。 BC5。ヘブライ語。アラム語。
※日常生活のルール本(タルムード)。日常生活のルールに詳しい先生(ラビ)。集会所(シナゴーグ)。
※シナイ山。現エジプト領。
※肉体は神から与えられたものなので、(神の命令でない?)他殺・自殺は罪。人間の生き死にを決めるのは神。

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カテゴリ: 世界史
感想投稿日 : 2021年7月4日
本棚登録日 : 2021年7月4日

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